我輩は犬である。タイトルはまだ無い。

犬について書いた記事は無かったと思います

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こわれないとんかち

 昔々、世は太平の江戸中期。戦の歴史は過去に消え、刀を抜かなくなった武士を横目に町人が、吾が世の春を謳歌していた時代。そんな時代のお話。
 
 ある城下町に松太郎という大工がいました。松太郎はとても腕の良い大工で、一癖二癖どころか、無くて四十八癖な荒くれもが多いなか、酒も女も博打もほどほどに、大工としては真面目男でした。
 そんな真面目な松太郎ですから、出世も早く、20代後半には棟梁を任されるほどになりました。
 
 それから数年、棟梁として仲間から慕われるようになった頃には、城下では『松太郎』の名を知らない者が居ないほど有名な棟梁となり、近隣の町以外からも仕事が舞い込んでくるようになりました。
 そんなある日、一仕事終えた松太郎に、仕事の依頼者が声を掛けてきました。
 「いやー、流石は松太郎さん。立派な仕事をなさる。」
 「俺には良い仲間が沢山居るからな。これぐらい朝飯前よ。」
 「そんなこと御座いません。松太郎さんだから出来るんですよ。」
 「そんなに褒めてもらえると嬉しいけど、何にも出ないぜ。」
 「いえいえ、そんなつもりでは御座いません。私はお礼をしたいだけです。」
 「お礼?」
 「はい、これを貴方に使っていただきたいのです。」
 仕事の依頼者がお礼に渡したもの。それは木槌でした。
 その木槌は、箱根の寄木細工のように木々を組み合わせたモザイク模様で、実際に使うようなものでは無く、飾って眺める芸術品のように見えました。
 しかし、依頼者曰く『これは壊れないとんかちなんです。飾っておくよりも、腕の良い大工に使っていただいた方がよろしいかと思いまして』と言う事らしいのです。
 壊れないとんかち。そんな物がこの世にあるのだろうか?松太郎も仲間たちも半信半疑でした。
 「まあ、実際に使ってみればいいだろ」
 松太郎の一言で『壊れないとんかち』は仕事中に優先的に使われる事になりました。

 それから数年。松太郎と『壊れないとんかち』は国中に知らない者が居ないほど有名になりました。そして、その頃から、松太郎は何かを考え込む事が多くなってきました。
 それを心配して、ある日若い大工が松太郎に声を掛けました。
 「どうしたんです棟梁?」
 「いや、なんでもない。」
 「なんでもないって、そんなに思い悩むなんて棟梁らしくないですよ。」
 「あぁそううだな。すまない、本当になんでもないんだ。」
 若い大工の言葉に何か感じるものがあったのか、その日から松太郎は以前のように働きだしました。
 しかし、ある日の事、松太郎は旅に出てしまいました。
 「俺は旅に出る。お前たちはそのとんかちを使って仕事を続けてくれ。俺が居なくてもお前たちなら大丈夫だろ?」
 大工たちは困り果てました。確かに棟梁が居なくても仕事はできる。でも、誰が自分たちのような荒くれ大工を纏めてくれるのか?纏めるものが居なくて仕事ができるのか?
 大工たちの自己分析は悲しいほどに的中しました。腕は良いのにやることはバラバラ。仕事中の喧嘩なんて、まだ良いほう。仕事場を抜け出して酒、女、博打に勤しむも者もあらわれました。
 そして大工たちは過ちを犯してしまいます。
 「このとんかちを売ろう。」
 今や『壊れないとんかち』はとても有名です。売れば一財産の価値はあるのです。仲間全員に分配しても、3~4年は遊んで暮らせます。
 大工たちはとんかちのお金を持ってバラバラになりました。

 それから数年。バラバラに散らばった大工たちは、今は閉鎖された昔の職場へ集まっていました。
 「金を全部つかっちまって。ヘヘヘ」
 「俺もだよ」
 「俺も」
 「俺たちどうしようか」
 小金を掴んで得た夢もつかの間、大工たちの手には金も仕事もとんかちも残っていませんでした。
 「何やってるんだお前ら?」
 聞き覚えのある声に大工たちは振り返ると、そこには松太郎。
 「棟梁!」
 「お前ら仕事は、とんかちはどうした?」
 「ヘヘ、それが・・・」
 「わかってるって、壊れたんだろ?」
 「へ?」
 「まったく、お前らは俺がいないとダメだな」
 松太郎は笑いながらあるものを大工たちに渡しました
 「これは!壊れないとんかち!」
 それは、『壊れないとんかち』に良く似た、でも少し違う木槌でした。
 松太郎の旅。それは『壊れないとんかち』を作る旅でした。色々な樹の特性を理解し、それを複雑に組み合わせることで、限りなく壊れにくいとんかちにできる。そう思った松太郎は長い年月をかけて『壊れにくいとんかち』を作り上げ、旅から戻ってきたのです。

 それからと言うと、松太郎は棟梁に戻り、仲間たちも(とんかちを売った事は内緒にしつつ)改心し、再び世に松太郎組の名を轟かせるようになりました。
 「いや~、しかし、壊れないとんかちってのは結局迷信だったんですね。」
 「いや、それはどうかな?」
 「え?だって、棟梁の作ったとんかちだって壊れるんでしょ?」
 「俺の作ったとんかちはな」
 不敵に笑うながらそう言う棟梁を前に、大工たちは言葉の意味がわかりませんでした。棟梁は『壊れないとんかち』と同じ『壊れにくいとんかち』を作ったはず。それなら『壊れないとんかち』は無いとわかってるはずなのに、なぜ『壊れないとんかち』を否定しないのか。
 松太郎は続けて言いました。
 「お前ら、壊れないとんかちが壊れたところは見てないだろ」
 大工たちは思いました。あぁ全部バレてる。と

 めでたしめでたし
という事で
世の中には解からない事がたくさんあって
そして解からない事自体は重要じゃないんだよ
って話
『壊れないとんかち』が本当にあっても無くても
物語には米粒ひとつほどの影響も無いんだからさ

ロボットヲタク的に言うと
パラダイムシティはパラダイムシティのままが良かった
真実なんてどうでもよかった
って事です
どうもエコ犬でした

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